Orchestratorの「継承解除設定モデル」非推奨化に伴う、「権限の和集合モデル」への移行について

1. 非推奨化の予定

Orchestratorの継承解除設定モデルを廃止し、権限の和集合モデルに置換することが2024年5月に発表されました。
スタンドアロン版およびAutomation SuiteのOrchestrator v2024.10以前のバージョンには影響ありません。
最新情報は公式ドキュメントをご確認ください。

参考:
「非推奨化のタイムライン > Orchestrator」

2. 現行モデルと新モデルの比較

「継承解除設定モデル」と「権限の和集合モデル」は、Orchestrator の 「アクセス権を管理」機能において、グループアカウントに対する設定をグループに所属するユーザーアカウントに対して反映するモデルの種類です。

2-1 継承解除設定モデル(現行)

グループに対する設定は、ロール設定を除き、グループに所属するユーザーがOrchestrator 初回ログイン時にテナントへ自動的に割り当てられる際、ユーザー設定の初期値としてグループの設定が反映されます。
Orchestratorテナントにユーザーが割り当てられた後は、グループ設定を変更しても、既にテナントへ割り当て済みのユーザー設定に反映されません。
ただしグループに対するロール設定は、グループ設定が常に所属ユーザーに継承されます。

グループ設定 挙動
ロール グループ設定は、所属ユーザーへ常に反映する
UI プロファイルの設定 グループ所属ユーザーが自動割り当てされる際の初期値
クライアント バイナリ (Robot、Assistant、Studio) の
自動更新ポリシー
グループ所属ユーザーが自動割り当てされる際の初期値
このグループのユーザーによるオートメーションの実行を有効化 グループ所属ユーザーが自動割り当てされる際の初期値
このグループのメンバーの個人用ワークスペースを有効化 グループ所属ユーザーが自動割り当てされる際の初期値

2-2 権限の和集合モデル(新モデル)

グループに対する設定が、グループに所属するユーザーに対して常に反映されるようになります。

グループ設定 挙動
追加のロール グループ設定は、所属ユーザーへ常に反映する
UI プロファイル グループ設定は、所属ユーザーへ常に反映する
クライアント バイナリ (Robot、Assistant、Studio) の
自動更新ポリシー
グループ設定は、所属ユーザーへ常に反映する
個人オートメーションのセットアップ グループ設定は、所属ユーザーへ常に反映する

3. 権限の和集合モデルの詳細

3-1 追加のロール

ユーザーが利用できる権限は、以下の2つのロールの和集合によって決まります。

  1. ユーザーに直接割り当てられたロール
  2. ユーザーが所属する各グループから継承されたロール

この動作は、従来の継承解除設定モデルと変わりありません。

具体例:

  • ユーザーが所属するグループ:Automation Userグループ、Everyoneグループ、カスタムのグループ01

  • テナントにおけるロール割り当て

    • ユーザーに直接割り当てたロール:Allow to be Automation Publisher
    • Automation Userグループに割り当てたロール:Allow to be Automation User
    • カスタムのグループ01に割り当てたロール:Allow to be Folder Administrator
    • カスタムのグループ02に割り当てたロール:Orchestrator Administrator
  • フォルダーAにおけるロール割り当て

    • カスタムのグループ01に割り当てたロール:Folder Administrator
  • フォルダーBにおけるロール割り当て

    • ユーザーに直接割り当てたロール: Automation Publisher
    • Automation Userグループに割り当てたロール:Automation User
    • カスタムのグループ02に割り当てたロール:Folder Administrator

上記の場合、このユーザーは以下の権限を持つことになります:

  • テナントでの権限:Allow to be Automation Publisher、Allow to be Automation User、Allow to be Folder Administrator
  • フォルダーAでの権限:Folder Administrator
  • フォルダーBでの権限:Automation Publisher、Automation User

上記例での、テナントでの権限の和集合イメージ:

  • Everyoneグループはテナントに割り当てていないので、Everyoneグループから継承するテナントロールはありません。
  • ユーザーはカスタムのグループ02に所属していないので、グループ02から継承するロールはありません。

3-2 UI プロファイルの設定

UIプロファイルの設定では、Orchestratorユーザーが、WebブラウザでOrchestratorのどの画面を表示できるかを設定します。

設定 個人用ワークスペース 個人用ワークスペース以外の画面
UI アクセスなし
個人用ワークスペースのみ 表示できる
標準インタフーェイス 表示できる 表示できる

ユーザー設定とグループ設定との和集合で、表示できるものが決まります。

具体例:

  1. ユーザー設定が「UIアクセスなし」、グループ設定が「標準インターフェイス」の場合:グループに所属するユーザーは「標準インターフェイス」にアクセスできます
  2. ユーザー設定が「個人用ワークスペースのみ」、グループ設定が「UIアクセスなし」の場合:グループに所属するユーザーは「個人用ワークスペースのみ」にアクセスできます

3-3 クライアント バイナリ (Robot、Assistant、Studio) の自動更新ポリシー

この設定により、StudioやRobotの自動バージョンアップに関するポリシーを指定することができます。
更新ポリシーは、ユーザーレベル、グループレベル、マシンレベルの3つのレベルで設定可能です。

ユーザーレベルおよびグループレベルの更新ポリシー:

  • ユーザーモードのロボットにのみ適用可能です
  • ユーザーレベルとグループレベルの内、より新しいバージョンを指定している更新ポリシーが適用されます

マシンレベルの更新ポリシー:

  • ユーザーモードとサービスモードの両方のロボットに適用可能です
  • ユーザーレベルまたはグループレベルの更新ポリシーが「なし」以外に設定されている場合、これらの設定がマシンレベルの更新ポリシーよりも優先されます

具体例:

  • ユーザー設定:特定のバージョン「23.4.5」
  • グループ設定:「バージョン 23.10 の最新パッチ」
  • マシン設定:「最新バージョン」

この場合、更新ポリシーは次のように適用されます:

  1. サービスモードのロボットの場合:マシン設定のみが参照されるため、「最新バージョン」が適用されます
  2. ユーザーモードのロボットの場合:
    a. ユーザー設定とグループ設定が存在するため、マシン設定は無視されます
    b. ユーザー設定(23.4.5)とグループ設定(23.10の最新パッチ)を比較すると、グループ設定の方がより新しいバージョンを指定しています
    c. したがって、「バージョン 23.10 の最新パッチ」が適用されます

3-4 ユーザーによるオートメーションの実行を有効化

この設定では、UiPath Assistantからの有人実行や、UiPath Studioでオートメーション開発できるかどうかを制御します。

設定 個人用ワークスペース以外のフォルダー 個人用ワークスペース
なし
ユーザーによるオートメーションの実行を有効化 利用できる
ユーザーによるオートメーションの実行および
個人用ワークスペースを有効化
利用できる 利用できる

ユーザー設定とグループ設定との和集合で、利用できるものが決まります。

具体例:

  1. ユーザー設定が「なし」、グループ設定も「なし」の場合:ユーザーは、UiPath Assistantで有人実行できず、Studioでオートメーション開発もできません
  2. ユーザー設定が「ユーザーによるオートメーションの実行および個人用ワークスペースを有効化」、グループ設定が「ユーザーによるオートメーションの実行を有効化」の場合:
    • 個人用ワークスペースを利用できます
    • 個人用ワークスペース以外のフォルダーのうち、自分が割り当てられたフォルダーを利用できます
    • 割り当てたユーザーライセンスの種類に応じて、ユーザーはUiPath Assistantで有人実行したり、Studioでオートメーション開発できたりします

4. 権限の和集合モデルへの移行手順

以下の手順で、権限の和集合モデルへの移行をお願いいたします。
手動で移行しない場合、非推奨化のタイムラインに沿って、権限の和集合モデルへ自動移行することを予定しております。

4-1 移行による影響の事前確認

Orchestratorテナント > アクセス権を管理> ユーザーの移行にて「レポートを取得」をクリックすることで、権限の和集合モデルへ移行した場合の影響を受けるユーザー情報が出力されます。


このレポートは1日に1回まで作成でき、7日間保持されます。
レポートはCSVファイルとして出力され、以下の情報が含まれます。

  • ○○○ - Current列:現在、ユーザーに適用されている設定です
  • ○○○ - Post-migration列:権限の和集合モデルへ移行後に、ユーザーに適用される設定です
  • ○○○ - Via groups列:権限の和集合モデルへ移行後に影響する設定が、どのグループから継承されたか示します

レポートサンプル↓

User Id Name Email UI profile - Current UI profile - Post-migration UI profile - Via groups Update policy - Current Update policy - Post-migration Update policy - Via groups Enable user to run automations - Current Enable user to run automations - Post-migration Enable user to run automations - Via groups Personal workspace - Current Personal workspace - Post-migration Personal workspace - Via groups
1234 User1 Test user1@test.com Standard Standard None None FALSE TRUE Automation Users;Automation Developers FALSE TRUE Automation Users
4567 User2 Test user2@test.com Standard Standard None None TRUE TRUE FALSE TRUE Automation Users
8900 User3 Test user3@test.com Standard Standard None SpecificVersion 23.10.4 UpdatePolicyGroup TRUE TRUE FALSE TRUE Automation Users

4-2 必要に応じた設定変更

権限の和集合モデルへ移行すると、ユーザーの権限が増える可能性があります。
レポートを確認して、移行後の設定に問題がある場合は、以下の対策を事前に行ってください:

  • 関連するグループの設定を適切に変更する
  • 必要に応じて、ユーザーを特定のグループから外す

4-3 権限の和集合モデルへの移行実施

設定の確認と調整が完了したら、「移行を開始」をクリックします。
移行を開始すると、移行前には戻せません。


権限の和集合モデルへ移行後、Orchestratorテナント > アクセス権を管理 > アクセス ルールにて「アクセス権を確認」をクリックすると、ユーザー設定とグループ設定の和集合の結果を確認できます。

権限の和集合モデルへの移行手順について、より詳細な情報は公式ドキュメントをご参照ください。

参考:
「継承解除モデルから権限の和集合モデルに移行する」